虚を磨く/菊西 夕座
うちらのいのちはこんもりとしげった森ではありません
そこのわれてるひと匙にすくわれこぼれる朝露です
かの俳優はめをとじて出ばんがくるまでうごきません
さんりく産の朝採りがとかいの露店にならぶまで
ひたすら独りでめをとじてうつろの玉をみがくのです
ぶたいのはしのくらがりでいきをひそめて矯めるのです
まるで矢をいるつわものがつるを必死とはるように
ぜんしんぜんれい集中しますみの刀になるのです
ようやく出ばんをつげられて鞘からおのれをぬくときは
ひきしぼったる矢のつるをいのちとかえてときはなち
虚構のせかいにあなあけてうちらはまことにいたるのです
まことはすなわち虚構の
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