面影/レタス
 
柔らかな陽射しの中庭で
ぽつりとベンチに座っていた
ぼんやりとした記憶の狭間に
きみの面影が通り過ぎてゆく

あれから何回秋を繰返しただろう
水溜まりに突っ伏して夜明けを待ったあの日
ぼくは確かに死んでいた

狂った時計はいまでも秒針を刻んでいる
あの頃に帰りたいという訳でもなくて
ゆっくりと胸のページを捲っている
戻らない記憶は美しすぎて
いまも虹色に輝き魅了する
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