THE THINGS WE DO FOR LOVE。/田中宏輔
で、おとついに時間を戻す。
ぼくがひとりで飲みにきてたときにね。
「ぼくも、あんなジジイになりたい。」
映画のなかに出てきたチョー・ブサイクな白人のジジイを指差した。
「あれ、あのジジイね。」
「ぼくは、かわいいと思うけど」
「ぼくは、マスターとちがって
年上はダメなの。」
「あの俳優さん、かわいいと思うけど。」
「ジジイじゃん。
ぼくもジジイだけど。
でも、あんなにブサイクなジジイになったら
もう恋をしなくても、すむじゃん。
期待しなくても、すむじゃん。
はやく、あんな汚いジジイになりたいっ!」
「それって、きのうも話してたん
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