THE THINGS WE DO FOR LOVE。/田中宏輔
な錯覚がした。
音が
動く画像になって
目の前を通り過ぎてくような感じかな。
「ごめんね〜。」
と
もう一度
笑い顔をして
念を押しておく。
「やっぱ、ぼく
けちなんだわ〜。」
すると
湊くんが
あらちゃんから返してもらった詩集を手にしながら
「ぼくは
多少、傷んでても平気なんですけどね。」
すると
あらちゃんが、
遠慮がちに
自分のリュックからもう1冊
湊くんから借りていた本を返しながら
「これ、ごめんなさい。
帯がちょっと破れました。」
あらちゃん
笑ってないし
でも
湊くんは
「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)