大阪文学学校体験記/室町 礼
合ってい
ることに、件の、顔に剣のある女がヒステリーを起こ
したことだった。
わたしが教室に入っていくとこれみよがしに「ガタン」
と音を立てて立ち上がり
いつも教室から出ていくのである。
わたしには同性愛の趣味も傾向も皆目なかったが、なぜ
かAとは気があった。
気があったと思うのはわたしだけであって、ほんとうは
わたしのぎこちない対人姿勢や態度に、そして頭が悪い
のに恥知らずにも詩がわかったふりをする愚かさに同情
をよせてくれていたのかもしれない。
知らなかったのだが、後日、Aはフィリピンで男性器摘出
手術を受けて女性になってしまった。わたしはAがそんな
ことで苦し
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