01.1../ryinx
 
それでも ながれる風は あたたかで わすれかけていた 光景を すこしだけ 写しこんで 古びて 破れかけた写真に みえるのは 刺しこまれた 時間の 破片で 光源は みあたらなくて どこにも 視えない 音のかけらは ききまちがえた 聴きまちがえていたものは あのとき 別の 写真に 映しこまれた 屋内の みどりの 草原の 風景の 映る たてかけられて 崩れおちた 揺らぐ 海の 底に 仄かに すこしだけ 微かに 淡く 滲む ゆめの 残像と いましがた きこえた ちいさな ゆめの かけらで はじめから どこにも なかった どこかに あると思っていた なないろの グラスの ひび割れた 目次には 掠れた インクの 蒼さのように すこしだけ いえないことを 浮かぶ ちいさな 泡のように 木目に染みた シンクに ながれる 日々の かけらに、とりもどされた 取り残した とれない きおくのなかの あの、遠い 街なみに ゆれる すこしだけ 揺れて ゆれて}

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