そのうち 眼裏に 花香る。/あらい
 
る、引力を滅したものが。
 黄昏を待たずに眠りにつくあとは。星星が揺らめくこと、凪のかなたへ漕ぎ出していた。

 水辺は上昇し ここは離れて等しい。地から美しく光を呑み込んだ 月よりもただただ軽い銀盤が。手を伸ばせば直ぐ届くほど、近づく素足で湖に降り立つ。確かに芯と微速を持って、ぬかるみの存在が湛みゆく。空を仰ぐ。なにもない底冷えするような漆黒とやはり、私だけと抱きとめている。

 その幸福が、厳しさが射るほどに焼きついて、道を覆って、重くのし掛かる。
 ずっと捕らわれている。どうか 定かにはできない けれども、

 錆びた釘を置いて行列を成して翔ぶ烏が、方向を定めて暮れていたなら
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