朝の電線/由比良 倖
 
朝、コンクリート塀の中で泣いている天使が
電線から垂れる浅葱色の
雨粒で僕を起こしてくれた

僕は宇宙を蹴ろうとしていたけれど、
朝は宇宙とは何の関係も無かった

その頃(いや今も)僕はローラ・ニーロや
ニック・ドレイクの、
冷たすぎる電熱線みたいな明るさを、
僕の細胞の最も古い祖先だと信じていた

空気は冷たくて、地球が回転を始める前の、
掠れた低音と、明るい灰色と、

朝の天使と電線と、冷たい空気と……

そのおかげで今も僕はとても寂しい
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