書きたいこと/由比良 倖
 
僕は海の青色を見た
道路の形を見た アスファルトはオブジェのよう
けれど僕は海の色を見られない
本当の色を知らない
桃の木とか知らない、その花も

世界の細部が好きなのに
何も愛していないのではないか
愛するとは多分、細胞や神経回路に
景色を染み込ませることだから
透明な程薄い肌で
世界の景色を
大胆にも食べることだから

死んだ世界はもう嫌だ
奈落から這い上がりたい
せめて空気 大気だけでも本当に感じたい

何にしろ、世界は回る
僕は涙と感情と生まれてきた意味を
一度でいいから世界の回転と一致させたい
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