恋のこと/はるな
ないねえ。
って言って、まず甘いパンを食べさせてもらった。それだけのことでひな鳥みたいに懐いちゃって、毎日毎日パンをねだった。わたしの手のひらはあるだけの甘さをのみこんで、乾いた乾いたと鳴くのだった。
ともかく、それが甘いパンだろうが苦い水だろうが、一度覚えたら壊れるまで食べ尽くすわたしだから、大事なのは分散だ。
わたしはパンを食べ仕事をし煙草を吸いながら安定剤ものむし、子供を産んで育てたりもした、犬猫の保護はできないので寄付金を収めたりし、狭いベランダで茂るような草木を育て、いくつものビーズでくだらないアクセサリーを作ったりした。でも紛れない気の強さに穴をあけ、フリルを付けて飾らせて、チョコレートを買いに走った。重たい重たいからだの端はもう見えなくて、でも走った、走ってたら恋の前兆の前兆の前兆のようなものがきらって光ったから、なんだろうってかがんだら全部落としてしまって、それで、またはじめからの一文無しになった。
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