もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
がおいしかった。
焼鳥がおいしかった。
マスターのみつはるくんの盛り上がった胸と肩と腕の肉。
帰るときに店の外まで見送ってくれたけど
ぼくは見送られるのが嫌いなんだよね。
短髪だらけのゲイ・スナック。
河原町ですれ違ったエイジくんに似た青年の顔が思い出された。
かわいかった。
最後に会った日の翌朝のコーヒーとトースト。
味はおぼえていないけど。
ふへふへ〜。
「そういえば
いま、『源氏物語』をお風呂につかりながら読んでるじゃない?」
「そうですよね。
つづいてますよね。」
「そ
いま、しょの28かな。
「{ルビ絵合=えあわせ
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