もうね、あなたね、現実の方が、あなたから逃げていくっていうのよ。/田中宏輔
 
話ね。
あっちこっちして、ごめんなさい。
でね
若い男の子の客が
「きょう10個の乳首を見たけど
 ひとつもタイプの乳首がなかったわ。
 もうデブも筋肉質もいなくって
 ガッカリだったわ。」
現実逃避かしら? と言う、店の男の子の言葉を耳にして
「現実の方が
 あなたから逃げていくってのはどう?」
と湊くんに言う。
ぼくは、よくほかのひとたちの会話をひろって
その会話に出てきた言葉を
自分の会話に使う。
湊くんも、よくそういうことありますよって。

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「あつすけさんが前にも言ってらした
 言葉を反対にするっ
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