溺れた蟻《改》/秋葉竹
できた
ちいさな水たまりで
溺れた蟻みたいだな
まるで僕は
月光だけが
斜めうえからうすくその存在を
清めるみたいに
照らしてくれている気がする
やさしい光で
息を吸うのさえ
難しい不器用さでなお生きるだなんて
僕のちいさな胸は
まるで悲しみに押しつぶされた
いっぴきの蟻のようではないか
いったい
どこへゆけば
この時間の止まったような痛みを
やわらげることができるのか
口うつしで
教えてほしいのは
君にだ
月光のようにやさしい舌をからめて
しあわせな時間を
永遠にしてほしい
いっぴきの蟻の僕は
そのときには
翼の生えた裸体を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)