溺れた蟻《改》/秋葉竹
 
できた
ちいさな水たまりで
溺れた蟻みたいだな
まるで僕は

月光だけが
斜めうえからうすくその存在を
清めるみたいに
照らしてくれている気がする
やさしい光で

息を吸うのさえ
難しい不器用さでなお生きるだなんて
僕のちいさな胸は
まるで悲しみに押しつぶされた
いっぴきの蟻のようではないか
いったい
どこへゆけば
この時間の止まったような痛みを
やわらげることができるのか

口うつしで
教えてほしいのは
君にだ

月光のようにやさしい舌をからめて
しあわせな時間を
永遠にしてほしい

いっぴきの蟻の僕は
そのときには
翼の生えた裸体を
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