鏡と子/木立 悟
 



火の舌
鉄の舌を持ち
語ることを持たない子がいて
その語ることの無さゆえに
ただ疲れ果てては眠りにつく


眠りはしばしば覚まされる
幾つかの鏡が子のそばにあり
何も映すことなくまわりつづけ
音の無い光をそそぎあう


やがて光はむらさきになり
ふさふさとした星の座と
降りおりる菓子のまんなかで
甘い震えに点滅してゆく


水の音
金の冠
横たわるものへの
ささやかな静けさ
波のなかの波を経て
星のかたちを傾ける


浮いては沈む数億年の
つらなりとめぐり ひとりの道のり
鉄の宙と
布の海の切れはしに笑む
ひとつの星の終わりとはじまり


光と光の会話の夜を
目をうるませては聴いている
眠りを恐れる子のために
羽は背を抱くちからをゆるめ
鏡のうしろに絵を描いてゆく






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