喘・息・力/松岡宮
喘息のちから
仕事むずかし烙印のゲオンゲオン
対人サービスの際に
あるいは電車のなかでそれは容赦なく訪れ
みちを塞いでゆくタンタン
宇宙船の横隔膜がふるえ
身体をよじらすゲオンゲオン
住民の減ったニュータウン
落葉樹の枝から三日月がよく見えた
もしかしたらこんなふうにしぬんかなあ
咳、咳、咳、100万回の水鉄砲
もしかしたらこんなふうにしぬんかなあ
咳、咳、咳、そして疲労でゲオンも出ない
咳が出ないことはさらなる死であり
動きを溜める横隔膜
そうだ咳が出るのはタンタンありがたいことだ
ひとりぼっちの長い夜
静寂をやぶるゲオンゲオンは生きている咆哮だ
もし光っているとしたら
喘息力で推進する宇宙船のようなものだ
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