数式の庭。原型その2/田中宏輔
 
よい日に
庭先のテーブルに肘をついて
両手のひらの上に自分の顎をのせて
すこしのあいだ
うとうととしていた。
なんの心配ごともなく
ただ詩人のメモやルーズリーフにあった言葉を
ひとつひとつ思い出していた。
鼻の下や額から汗が噴き出してきた。
目をあけて
まどろみから目をさますと
目の先に
さっきまでなかった花が咲いていた。
とても小さな花だった。
こうした
まどろみから目をさましたときにしか
見つけることができなかったものかもしれない。
そんなことを思った。
それは
詩人のメモにあった数式と同じものであった。
詩人は
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