数式の庭。原型その2/田中宏輔
かたちを見て、うつくしいと思ってしまうのだった。
覚えていることができるものだけが
うつくしいのではないことに気がついたのだった。
いつまでも覚えていられるものだけがうつくしいわけではないのだと。
覚えていることができるものだけがうつくしいわけではないのだと。
きょうは
一年のうちで
南中高度がもっとも高い日ではなかろうか。
朝もまだはやい、こんな時間なのに
つよい日差しに
数式の花たちが数や記号の影を落としている。
わたしは庭先のテーブルに
詩人のメモやルーズリーフを置いて
椅子に腰を下ろした。
この天気のよい
濃い影を落とす日差しのつよい
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