数式の庭。原型その2/田中宏輔
あったのであろう。
*
詩人のメモとルーズリーフから目を離して
庭先に目を向けた。
詩人のメモにあった簡潔な言葉が
わたしのこころを
あたりまえのようにして存在しているさまざまなものに
思いを馳せさせる。
かわきかけの刷毛でひとなでしたように
ほんのいくすじか、かすかに
もうひとなですると、なにもつかないといったぐあいに
まるで申し訳なさそうにとでも言うように
空のはしに白い雲がかかっていた。
わたしが手で雲をなでると
白い雲がすーっと消えていった。
まさしく青天である。
あのかわきかけの刷毛のひとなでは
わたしのこころ
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