数式の庭。原型その2/田中宏輔
*
そして、さらに
もっとおもしろいことにはね、
と、ゴーストが聞こえない声でささやいた。
見えない指で、わたしが差し示した空に雲がなくてもね、
きみたちは、空を見上げて
そこにない雲を
こころの目に思い浮かべることもあるんだよね。
と、ふと、そんな声が聞こえたような気がして
空を見上げた。
*
ゴーストは、空を曲げ
雲をまっすぐに伸ばしてばらまいた。
直線状の雲に数式の庭が寸断され
わたしの視線も寸断され
数と記号の意味合いのわからぬ並びを
同時に縦から横から斜めから上から下から
しばらくのあいだ眺めて
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