Heart beat/リリー
肌にヒリヒリとした
痛みこそ忘れ去られた闇は
東の、明けきらぬ雲の幕に覆われている
耳にのこるICUの輸液ポンプのモータ音
蛍光灯で煌々と照らされる空間は
ただ白っぽく広がっていた
面会での帰り際、
母が目覚めて私へ呼びかけた一言に
涙ぐむ看護婦
「もう遅いから気を付けて帰るのよ」
意識が朦朧としていて
何故、遅い時間だと分かるのか
二十三時を回り
人影の無い坂道を下る
途中で、自転車を止めて眺めた
高架鉄道を走り去る電車がまばゆかった
鉄道の軋み、ゆく先に
こたえにならない果てがある
佇む足裏を刺しつらぬく
めまいに襲われるようなヒビキ
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