平成家族/本田憲嵩
 
ガスコンロの焚火をつけて、
朝食用の目玉焼きやウィンナーが、
熱せられたフライパンのなかで活発に弾けるように、
いつも活き活きとバタバタしていたね、
炊飯器からいつでも熱々のご飯を茶碗によそって、
そう あれらの日々がぼくら家族の平成の原始時代、
面倒くさい洗顔と歯磨きがそのうち終わると、
父の自動車が車庫の中でエンジン音を奏ではじめて、
妹とあわてて玄関を出て二人で手を振って見送ったっけ、
あの朝の原始時代は、
じつによかったな、
父も母も今にして思えばまだまだ若かった、
そのうち景気の氷河期が到来して、
あなたたちがぼくたちに教えてくれた神話が軒並み崩壊して、
ぼくたちもあなたたちもちょっとばかり老け込んじゃった、
ついにはおばあちゃんもボケちゃって、
まるでこの国そのものみたいだね、


けれどもゴッドファーザーの老け込んだマイケル・コルオレーネが言った、
「どんな家族にも嫌な思い出はある」、
っていう映画の中のセリフ、
それで割り切って今はとても腑に落ちてる、


世の中って、つねに諸行無常なんだなぁ、


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