狭間/ホロウ・シカエルボク
 
のまま帰ってくれ、俺にはその女がそんな風に言っているように見えた、折角来たのだからという気持ちが拭えずしばらくの間葛藤したが、意味も無くそんなことを訴えたりしないだろうと思い、断念した、窓にずっと感じていた圧迫感のようなものが、そこから遠ざかるに従ってだんだん薄らいでいくような気がした、俺は入ってきた窓から外に出て、非常階段の一番下に腰を下ろし、いったいなんなのだと考えた、答えは出せる筈もなかった、立ち上がり、表通りへと歩いていく途中で、何かが激しく地面に激突する音を聞いた、思わず振り返ったけれどそこにはただ打ち捨てられた静寂がへばりついているだけだった。


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