狭間/ホロウ・シカエルボク
 
らかの人間がこのビルに住んでいたのかもしれない、どちらにせよ、シャワーを浴びるためだけに一階に降りてくるというのは少し面倒に感じた、本来居住を目的に作られたビルではないだろうから、多少の不便は仕方ないのかもしれなかった、ひとつひとつドアを開けて覗いてみたがそれほど面白いものは見つからなかった、二階に上がろうとして、踊り場にある大きな窓が目に入った、そこからは隣のビルの壁面が見えるのみだったが、夕日が斜めに入り込んで窓だけを器用に照らしていた、俺は階段の前で立ち竦んだ、その窓の中に女が居てこちらを眺めていた、その目はなにかを懇願するみたいに潤んでいた、どうか、頼むから上に行かないでくれ、どうかこのま
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