カーテンの裾/かのこ
 
汗を、かいていました。

あなたがわたしに触れたことや
愛を体現したこと
ひとつずつ、思い出して
泣くことだけは、回避して。

窓を閉め切ったこの部屋に
どうしてか風が吹いて
乾いた頬を撫でた。
カーテンの裾が揺れた。

汗が、乾いてゆく。

わたしはどうせ
動くひもの先っぽにじゃれる仔猫だったのです。
揺れるカーテンの裾も
いま気の済むまで引っ掻いてしまいたい。
唇だけきつく結んで
おままごと遊び、していればいい。

この風が止んだら
きっと全部忘れられる。

冷えた身体を
もう一度眠らせて。
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