数式の庭。原型その1/田中宏輔
 

まるで
見覚えのない部屋で目を覚ましたかのような
そんな気がすることもある。


*


星々を天空に並べた手と同じ手が
わたしの数式の庭で
数と記号を並べている。
夜空を輝かせている目と同じ目が
数式の花を咲かせている。
星々を吸い込み
星々を吐き出すものが
数式をこしらえては、こわし
こしらえては、こわしているのだった。


*


目のまえにある数式の庭と
わたしの頭のなかにある数式の庭のあいだに
その中間状態とでも言うのだろうか
いや、そのどちらでもないものなのだから
中間状態ではないのかもしれない

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