数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
なる形に変形し展開するのだ。
影だけ見ていても美しい花なのだが
空に雲がかかり
影のほうの花がすっかり見えなくなると
影ではないほうの花も同時にとまり
式変形もせず式展開もしないのであった。


*


この花が咲いているときには
数式の庭には風が吹かない。
風がきらいなのである。
多くの数式の花と同様に
この花の花粉は、わたしの目が運び
わたしの手が運ぶ。
考えごとでもしていたのだろうか。
間違えて
不等号記号を置くべきところに
等号記号を置いてしまった。
すると
その数式の花は
みるみるうちにしぼんでしまって

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