数式の庭。原型その1/田中宏輔
新しいフェイズというものを発見することなど
わたしにできるのだろうかと。
まったく新しいアスペクトをもつことが
わたしにできるのだろうかと思った。
まったく新しい感覚や感情といったものでさえ
それまで自分がもっていなかったそれらのものを
自分が獲得するとき
つねに
すでに獲得していたものと比較することによってのみ
感得していたように思われたからである。
ましてや、知となると
わたしごとき知性の持ち主に
わたし以外の人間にも未知である
新しいフェイズを発見し
新しいアスペクトをもたらせることができるとは
とうてい考えられない。
すでに他
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