数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
しの目は見る。
夜空を彩る星たちを
テーブルに置かれたコーヒーカップが立てる音が少しく震わせるのを
わたしの目は見るのだ。
そうだ。
これこそが恩寵ではないだろうか。
孤独であること。
これこそが恩寵というものではないのだろうか。
孤独でないものなど、ひとつもないということ。
なにものも絶対的に同じ意味を共通してもたらすことなどはないということ。
このことが、わたしを、わたしたち人間を
いや、あらゆる生き物たちを、あらゆる事物・事象を、
あらゆる概念すらをも、生き生きとしたものにしているのだ。
結びつけるということ。
考えるということ。

[次のページ]
戻る   Point(13)