数式の庭。─前篇─/田中宏輔
変形のその場とその時において
わたしと、わたしを変形した、そのものとが
一体であったためであると思う。
その存在は、わたしを変形しているときには
わたし以外のなにものでもなく
わたしそのものであったというのに。
それとも、わたしが
わたしこそが
変形するその場とその時そのものであったとでもいうのだろうか。
ひとつの記号にしか過ぎないわたしが。
*
むかしからよく見かける
数式の花も
見慣れたものだが
うつくしい。
新しく見慣れない数式の花が咲いていて
すこし奇妙な感じがするのだが
それはまだ見慣れていないためだろう
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