自分をも欺くために、すべて/ホロウ・シカエルボク
この夜は戻らない、錆びれた運動場のフェンスに巻き付いた蔓の記憶のように、検知出来ない場所で発酵した感情を生み続ける、それはどこにも行かない、蓄積してやがて漏れ溢れ、内側から肉体を侵攻してゆくだろう、いつかはそうなる、いつかはそうなるんだ、肉体には必ず終わる時が来るのだから、だからこうして、無数の引っかき傷を残し続ける、どちらが優勢なのか、当の本人でさえ知ることは出来ない傲慢なレース、何もかもすべて、手の中に留めておくことは出来ないのだと、不遜な笑いを浮かべてすれ違う者のようにあっという間に手の届かないところに行ってしまう、それならばもうかまわないよ、そう言ってしまえるほど思い切りも良くはなく、
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