十月になると彼女は/田中教平/Kou
女は秋生まれ
ハーヴェストの季節に生まれ
だから私の構成する
断捨離を行ったシンプルな
ええいや、無味乾燥ともいえる
一室に馴染まなかった
すぐにノートや
ペンシルや
化粧品の類を
散乱させて扱って
そのままにしてしまう
私といえばそれに別段怒らず
しかしどこか気にかけつつ
今日もキッチンをピカピカにして
先のモノを片づけ
拭き掃除をするのだ
まるでミニマリストに
禅に生きたいと
願ってもそれは私のエゴだ
女には芳醇なハーヴェスト、
つまり実りの季節への憧れがあり
モノはただそこに在ることを
確認したら放っておくことを
豊か、なんだと思っている
女は昭和の生まれなのだが
モノ=豊か、であるという
伝統的価値観の外へはいかない
ただ毎日料理をふるまってくれる
ありがとう、
そうして彼女の誕生日も近くなった
もう寝ましょうよう・・・とベッドに行けば
ドンドン、と打ち上げ花火の音が聞こえ
彼女は一言
うるさいなぁ、と言った
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