父の隠し部屋/おまる
 
になった年に、福岡で父が末期の病だということで突然連絡が入り、お別れを言いに行った。
父が突然いなくなったのは、わたしが小学校にあがる前のことだ。
熊本の実家を購入してすぐ、仕事が忙しくなり、ホテル住まいの生活を送るようになったのだと、弁かいめいたことを言っていた。
福岡を起点とし、自営業をしていて、中国人を雇っていたと。
本当の事なのか嘘なのかはわからない。
男兄弟には冷酷な父も、妹にはとことん甘かった。
「なに?まいちゃん」
「福袋ほしいからお金ちょうだい」
「死ぬ寸前の人によく金の無心をするな」
「いいじゃん、安いし」
「いくら?」
と”パパ”は自分の財布をあさる。

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