父の隠し部屋/おまる
 
高校2年の、あと少しで夏になるという頃に、
「高校を辞めて東京にいく」
と言い出した。
すると数日後、蒸発して行方不明だったはずの父が突然、現れたのである。
記憶の中の父は、足長おじさんみたいなイメージで、恰幅がよく、優しかった。
しかし目の前にいたのは、痩せた、オールバックのやな感じの男だった。
十何年ぶりに家に帰ってきて、開口一番
「だったら家を出て働け」
「働かないなら死ね」
と言われた。
「わかった」
と答えた。
ものの数分で家族会議が終わり、父はまたいつ帰ってくるかもわからない世界へ消えていった。
メラメラと母がきていたのは気づいていたが、すっかりあきらめたのか
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