その男自称詩人/花形新次
 
父が自称詩人だと
分かったとき
母は半狂乱になって
台所から包丁を取り出し
父に襲い掛かりました
母の一太刀は
自称詩人の脳天に突き刺さり
血が噴水のように噴き出ていました
私はその光景を見ながら
母を止めることも
助太刀することもなく
淡々と
ウィリアム・ブレイクの詩を
暗誦していました
自称詩人の悲鳴を聞いた近隣住民が
駆け付けてきて
母を自称詩人から
引き離して取り押さえ
自称詩人の頭から
包丁を抜き取りました
そして私に向かって
「Mくんは大丈夫?」と言いました
僕はその声を無視して
暗誦を続けたのでした
Fiery the angels rose, and as they rose deep thunder roll'd. Around their shores indignant burning with the fires of Orc


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