生きること/ひだかたけし
電線伝いに溜まった雨滴の群れ、無数無数
すぅうと膨らんではぽとっと落下していく
次々と、次々とまた膨らんでは落下して
繰り返し繰り返し
ベランダのキキョウやガーベラの花々
いっせいに咲き開きまた萎れ項垂れ
灰の空を色付かせ色褪せさせ
繰り返し繰り返し
沸き起こる胸奥からの歓びのまた虚しさの
深く深く息づき脈動し何かを語りかけ
繰り返し繰り返し
大きなお目々をくりくりさせながら
小さな女の子がイートインのガラス越し顔くっつけ
こちらにいかにも親しげに笑いかけ仕切りに濡れた髪振り
思わずピースサインを送るとその可愛らしい顔が輝き弾けて
今日 東京は雨だ 、
僕は移動する 只ひたすらに
時に追い縋ることなく振り返ることもなく
眼前に現れ来るもの 観入り魅せられ、
湧き出す心情の更に奥深く潜むもの
掬い取ろうと三度観入り浸り生き
この雨中にこの宇宙で 、
繰り返し繰り返し夢中で移動し続ける
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