風船/由比良 倖
 
廃墟の森を歩く少年は
ただ風船を友達にしてた

緑は風を受ける船
青は羽、赤は流れ星、
紫は雲の上の人々
白は予感で張り詰めている

清潔な太陽を受けて
風船たちは化石や燃料や
女王のよう

少年は歩き続ける
いつかは誰かの息子だった彼は
帽子を被り
名も無き法律と自然だけを守る
船長のように、番人のように

雲まで飛んでいく風船たちに
鎖を付けて
たった一人の王子のように

大好きだった世界と言葉を
過去の思い出として
口に含みながら

レモンの花を目印にして
何処かへと急いでいる
風船だけを友達として
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