『世界樹の断面』以後/中田満帆
 



 一篇の詩は極まれり 画布をまたひるがえすのみ無名のひとよ


 守一の猫たちどまる秋の雨いまだ降りをる窓を眺めて


 だれに口惜しき過古ありぬ ぼくら係留場の反対にゐて


 発ちさわぐかぜのなかから手を展ばす清掃人の貌また寂し


 だれがだれを裁く 赫い花咲くところまで虜囚歩きつ


 いずれかに道などあらじ湖水さえあらゆる苦を湛えるごとく  


 詩人の墓曝くように辞眼醒めたり その精髄を識る


 泣き延びる 夜の託ふたみこと云い零したり菊の葉落ちて


 口づけの一瞬を刳りぬいて食卓に置く シマアジとともに


 秋
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