慈雨/そらの珊瑚
降る雨は久しぶりです」
運転手の言葉ははんなりして優しげだ。
晴雨兼用の傘が役に立ったが、足元はだいぶ濡れた。
しばらくまっすぐの道を走る。
自家用車、バスやタクシー、トラック、車であふれている。
碁盤の目のような路、とはなるほど本当だ。
丸太町通り、三条通り…
変わらないもの、変わっていくもの。
古都を雨が包んでいく。
{引用=春、やわらかな緑の新芽を摘んで
すこしばかりの麦を混ぜて粥をこしらえる。
食べて生きていく。
ここで、これからもずっと。
かかが生きていたころからそうしてきた。
秋になればむらさき色の花をつける。
かかはそのひとえだを折り
まだ
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