男の涙/おまる
 
見慣れたカーテンの色彩が風に揺れて 部屋全体を染める。ねぼけなまこで電話に出ると君からだった。

君は僕の視線を逸らし 通いなれた道筋を迷うことなく進んでいった。これはゲームなのだ。渋谷とウチのちょうど中間地点に男が立っていて チョーセン語を喋っている。僕は一体彼のどこを見て日本人だと見破ったのだろう。君も彼も態度があまりに普通なものだから 実に堂に入った芝居に見える。君がこの場に誘ったのも彼と引き合わせるのが目的で 思いのほか受け身な自分がいる。

僕は君らと話を交わすこともなく 今度はどんなゲームになるのだろうと思うのだ。まちぜんたいがきょだいな密林だった。偽物のチョーセン人も 君が僕
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