約束の地/由木名緒美
胸の中に一筋、静かに流れているのを感じていた。
昔は必死にみきちゃんが「生きてくれますように」とただ強く願っていたけれど、今では、その彼女の選択を否定することの方が、私には傲慢で身勝手なことのように感じるようになっていた。「死ぬなんていやだ! 許さない! もっと苦しんでくれ!」と言っているように思えて。
みきちゃんが幸せになれますようにと、ただ願う。みきちゃんが生きていけますように。そしてそのどちらの選択も、そのすべてを愛せますように。
みきちゃんが言う。
「……ウクライナとかさ、小児科病棟に爆撃をするとか本当に何考えてるの?って感じだよ。なんでこの時代にまだ戦争なんてやってる
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