反時計回り。/田中宏輔
りをまじえて
「こう、左手に鑿を持ち、右手で槌を打つのですね。」
「楔形文字の場合もですか?」
とぼくが言うと
「それは型を圧す方法ですから
左から右です。
右からでしたら、つけた型を損なうかもしれないでしょう。」
と言われて、ああ、なるほどと思ったのですが
すると、さいしょにぼくにたずねられた数学の先生との話に戻って
その数学の先生が、ぼくとの会話のいきさつを話されたので
その宗教学の先生が
「巡礼が教会の廻廊を回るのも反時計回りですよ。」
ぼくも、もうひとりの数学の先生も知らないことでした。
思わず、ふたりは目を合わせましたが
「どう
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