反故の里帰り/46U
 

待合所と呼ばれるところには
およそどこでも連れて行く
役所 駅 それから病院

薬待ちの ある夕方
デッサン用の黄色いボールペンを走らせながら
そのページが調剤薬局のものだと気づいた
(おまえさま、里帰りね)
ささやくと なにかがペン先を逸れさせた
わたしの意図しない地点をボールペンがすべる
天のいたずらが描いてみせたのは絶妙なライン  

反故の身ではめったにできぬ里帰り、と
詩藻めいたものがまたたいた
故郷はうれしいか、と訊いてみる
一瞬の沈黙
インクはにじんで見えなくなった
ゆめかうつつか 帳面もこの眼もたぎっていた

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