許されざる者/涙(ルイ)
いったと
テレビに映し出されたナイフを振り回している男に
僕は見覚えがありました
全身の力が抜けたような感じがしました
わなわなと躰の震えが止まらず
目の前が 僕のまわりの世界が
ぐにゃりとねじ曲がってしまったような
足元から崩れ落ちてしまいそうな
どうしていいんだかわからなくて
意味もなく部屋のあちこちを開けたり閉めたり
水をがぶがぶと 2?のペットボトルほとんど飲み干してしまったり
部屋の鍵がすべてかかっていることを確認し
カーテンを閉め切って
テレビから流れてくるその映像とその男を
ただただじっと見つめていました
あの日から 僕や家族の取り巻く環
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