犬の影/まーつん
 

私に突き刺さり
思わず叫んだ

新しい発見だった
どんなに嫌な経験をしても
その記憶を捨て去る事が出来れば
過去に囚われずに済む
そう思ってきた

だが、消せないものがあった
その時味わった感情だ
怒りや悲しみ、屈辱に憎悪

それらの感情は
ひとつの黒い影となって
取り残された双子の片割れのように
あてもなくうろついている

鼻をひくつかせて探している対象は
多分、自分の存在理由だろう

いつか、その思い出の影は
私自身の影と溶け合い
一つになるだろう

その時、私はどうなる
牙を?き、吠えるのか

己を掻き立てる感情の
源を知らぬまま
誰に噛みつくというのだろうか

主に捨てられた
犬のように

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