帰り路/リリー
 
 昨日の夕方
 毛虫が落っこちてきたら嫌だなと思って
 茂る枝の下を避けて立ち
 青信号を待った 
 公園の桜の木

 毎年春に花雲を愛でて
 木は すっかり街中で溶け込んだ住人
 だから今朝も其処に
 立っていたはずでした
 公園が取り壊されて更地になる事は分かっていても
 道路沿いの木まで撤去してしまうなんて
 想像していなかった

 帰宅時に異様な空間の広さへ目を疑い
 あるはずの木が、根っこから引き抜かれ
 切り倒されて惨たらしく
 八つ裂きに晒されていました

 桜の木は知っていたのでしょうか?
 人間を、その残忍さを
 どんなおもいで街を
 行き過ぎるわたしたちを見ていたのでしょう

 これを当然のことのように
 移りゆく光景を目の端にとめて人は皆、
 帰り路を急ぐのです。
 
 
 
 
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