悲しみ。/田中宏輔
 
半分の半分+…… = 1
1=半分+半分の半分+半分の半分の半分+半分の半分の半分の半分+……

だから、悲しみの半分を悲しみではないものにする。
残った半分の悲しみの半分をほかのものにする。

さらに残った半分の半分の悲しみの半分をほかのものにする。
これを繰り返して、悲しみを限りなくほかのものにする。

それなのに、残ったものは、最初にあったものと同じもの、
同じひとつの悲しみであった。


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