小説/田中教平/Kou
 

まだまだ若いと人はいう
まだまだ若いと人はいうけれど
「生活」に押しこめられて
何もたのしいことがない
詩を詠むことしか
ほんとうの自分を語ること以外
晴れ晴れとすることがない


部屋を片づけなきゃならない
雑巾を絞らなきゃならない
ならない
ならないばっかりで
この「生活」には甘味がない
味のなくなった
ガムを噛んでいるよう
だから私は詠うのだ
──私は老いさらばえた!と


パートナーがいるだけ
いいじゃないかと
家があるだけ
いいじゃないかと
いうものもいる
彼らに私は語らない
語ってなんぞやるものか


しかし
部屋を片づければすっきりはする
あの雲が
私の小説のように思えさえする


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