小説/田中教平/Kou
まだまだ若いと人はいう
まだまだ若いと人はいうけれど
「生活」に押しこめられて
何もたのしいことがない
詩を詠むことしか
ほんとうの自分を語ること以外
晴れ晴れとすることがない
部屋を片づけなきゃならない
雑巾を絞らなきゃならない
ならない
ならないばっかりで
この「生活」には甘味がない
味のなくなった
ガムを噛んでいるよう
だから私は詠うのだ
──私は老いさらばえた!と
パートナーがいるだけ
いいじゃないかと
家があるだけ
いいじゃないかと
いうものもいる
彼らに私は語らない
語ってなんぞやるものか
しかし
部屋を片づければすっきりはする
あの雲が
私の小説のように思えさえする
戻る 編 削 Point(4)