緑のヌード/たちばなまこと
 
めて ぼくを少しだけほどいて
緑を舐める
夜露のとろみに泣いてよ あなた

ストレンジャーにも親しい 街の端っこ
ヌードで 香をたいて 水をたたえて 待ってる
思うよりも風の嫉妬はせっかちで
カーディガンに手を伸ばす
女はあやうい右手で 上着の前を握りしめる
わだちにおちて 女もおちて 嫉妬にさらわれてゆく囁きをステレオタイプ
あなたが欲しいよ
彼方から迷い込んだMの字はゆるやかに 羽ばたいてまたたく
水面の甘えた声は アンニュイなまま東を目指し
乱れを直して女は 女の意志で目をつむる
緑が育つ 水がゆく
小鳥がキャッチする羽虫は 最後の息を
行方知れずの列車は リズムを
左手のベルは 湿った震えを
弾き語る
乳房のしびれに薄目を開けると
まだやらかい 青い鳥の羽が揺れていた



Mの字…カモメ

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