想い河/まーつん
丘の上に立ち
手に握る小さな鐘を
頭上に振り上げて
カランコロンと打ち振ると
雲が空に集い、雨を届けてくれた
掌に受け止めた雨粒の色は
必ずしも透明ではなく
様々な色に染まっていた
なぜなら
絞り出す涙や汗が
透き通っていられたのは
生まれたての頃だけ
そして私はもう
子供ではなかった
経験と感情
二つが溶け合い生まれる滴は
雲を成し、雨となって
内なる自分を打つ
心のあちら、こちらを濡らし
消えゆくだけの羊雲がいれば
長く居座る厚い雲もある
雨は地を穿ち、流れとなり
さざ波を立てて誘惑する
さあ、ここに飛び込め、泳ぎなさい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)