山登り/由木名緒美
 
自尊心と自己卑下の坂道を
乱れた呼吸で行きつ戻りつ
水面に映る歪んだ笑みをこぶしでたたく
うつし世の花はあやしくかがやき
見るものすべてを惑わせる
常世のことわりを指で折り込み
祝詞のように口ずさむと
ひとつの水脈が行き場を見出し
流れ生きることの喜びに踊る

伝うのもいい 廻るのもいい
水は高地から低地へと注ぐのに
なぜ人は山に登るのだろう
定めに反するように崖を踏みしめ
天辺(てっぺん)から見下ろす人生の
一瞬の絶景だけをただ求めて
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